「とびきりおいしいぎょうざを届けたい」
40年のコック歴の中で、そのことを一心に追い続けてきました。
しかし、来る日も来る日も餃子を作りながらこう思ってきました。
「もっとおいしい餃子を作ることができるのではないだろうか」
本当に数えきれないほど、試行錯誤を続けてきました。皮、具、味付け、肉の挽き方、タレ、保存方法……ぎょうざの事を考えて、ずっと生きてきたと言っても過言ではありません。
そして、たどり着いたのが、今、ご提供している餃子の数々です。ごまかしは一切なし、正面から追い求めた現在のこたえです。
ただ、どうしても、ここにはないものを追い求めてしまう。その気持ちは今も抑えきれません。
何かモヤモヤしたものが心の中にありました。しかし、そのことに中々自分では気づきませんでした。
ただ先日、ふとした拍子に、そのモヤモヤの正体に気がつきました。
「奈良に生まれて、奈良に育ててもらった店だからこそ、ぎょうざの中にもっと『奈良らしさ』を込めてみたい。誇りを持って奈良発の餃子を作ってみたい」
日本最古の都として、大和とも呼ばれる奈良。しかし、俗に「奈良にうまいものなし」等と揶揄(やゆ)されることもしばしば。
こんな悔しい事はありません。しかし、本当にそうでしょうか?
「大和はくにのまほろば(素晴らしい場所)」と言われたいにしえより、奈良にこそ、本当にうまいもんがあるのではないか?
そう思い立ち、私は改めて奈良産の食材を調べてみました。
すると、あるわあるわ、お肉も野菜もお醤油、水までも!
「奈良ってすごい。大和は奥深い」
私以外にも、この奈良の地で、丹精込めて食に打ち込んでいる方は無数に存在する。
そして、初心に帰って、もう一度、ぎょうざづくりを見直すことにしました。
テーマはもう決まっています。
- 見つけた素材の味わいを最大限に引き出すこと。
- 季節ごとに最適な食材を選ぶこと。
- 安心・安全のためにも、添加物や化学調味料に頼らないこと。
- そして、コック歴全ての経験と技術をぶつけること。
これから、少し長い旅になるかも知れません。ただ、「これが本当の大和の国のぎょうざ」だと、言い切れるまで妥協はしないつもりです。
小さな店のささやかな挑戦ですが、きっと答えを見つけて見たいと思います。
「とびきりおいしいぎょうざを届けたい」
しかし、いきなり壁にぶつかったのです。
(つづきます!)