(片上醤油さん店舗)

【前回まで】

とびきりおいしい餃子を届けたい。そんな気持ちで始めたこのプロジェクト(01)。いきなり具材のミンチ肉が理想の品質にならず、悩んだ時に出合った「奈良らしさ」というテーマ(02)。具材の味に奈良らしいアクセントをつける「大和まな」。そうして探せば次々見つかる「奈良の特産品」(03)。さらに「結崎ネブカ」を加え、味の方向性が決まると共に、ミンチを自社挽きに変更。手間も費用も必要ですが、餃子がもう一段レベルアップ!(04) そして、新たな難問に挑みます。
(当社の大和野菜餃子完成までの道のりを振り返る連載記事です)

残された課題

「とびきりおいしい餃子」というゴールに向けて取組んでいる本プロジェクト。中心となるミンチ肉の品質の問題、具材の方向性を決める「まな」と「ネブカ」という二つの野菜。そこから見えてきた「奈良発」というテーマ。これらの問題をクリアして残された課題は、餃子の「皮」と「味付け」という重要なテーマでした。どちらも理想の餃子に近づけるには、更なる工夫が必要だ、と強く感じていました。

既製品の皮の限界

餃子と言えば、具材を包む皮は不可欠です。これまでも、私はたくさんの皮を試食し、これがベストであると言える商品を仕入れていました。餃子の皮は、基本的には小麦粉、塩、でんぷんなどで作られるシンプルなものです。ただ、シンプルなだけに、品質管理が非常に難しいのです。
仕入れた皮も満足のいくものだったと思います。何より、製造の手間が省けるというメリットがあります。飲食業は時間との戦いでもあります。限られた時間でいかに美味しいものを作るか。その為には、専門業者の力を借りることも時には必要です。

時間との戦い

ただ、その「時間」が問題でした。どれだけ気を使って保存しても、餃子の皮は徐々に乾いていきます。するとどうしても固くなってしまいます。他にもしわ、折れ、欠け、破れなどの問題もありました(画像)。


平日はそれでも毎日仕入れるので大丈夫ですが、土日を挟むとどうしても新鮮さが失われる……餃子の皮も生きているのです。
それに添加物も気になりました。できるだけ余計なものは入れたくない。
それもやはり「時間」です。自社生産に切り替えると、もちろん、その分の作業が増える……ということは、スタッフの負担も増えます。

ただでさえ目が回るような忙しさです。私はまた、考え込んでしました。

異業種交流で見つけた職人技

そんな時、ふとしたきっかけで異業種交流会に参加しました。ちょっとした気分転換のつもりでしたが、ある経営者の方と偶然お話する機会が出来ました。

それが、片上醤油(ウェブサイト)の代表、片上さんでした。

サイトにも説明がありますが、昭和6年創業で、奈良県中部の御所という土地で、奈良県産大豆を主原料に醤油を生産されています。

醤油--これも餃子の味付けには必要不可欠、いや、味付けの中心です。
同じ奈良県の企業として、私は、片上さんの醤油の話を興味深く聞きました。

「杉の大桶の中で自然の季節のままに発酵熟成する、天然醸造の手法を守っています」

と、いうことでしたが、実際に製造の過程では、一晩中、微妙な温度管理の為に、生産する蔵で毛布にくるまって見守られるそうです。そして、人の背丈よりも大きい杉の大樽がいくつも並んでいる製造現場も見学させて頂きました。
片上さんは気さくで優しいお人柄ですが、醤油の事になると、人が変わったように熱い思いを語ってくれました。私の思いと共鳴する感じです。

これが出会いというものだと思います。私はいくつも醤油を試食させて頂き、その中から、「重ね仕込み醤油」を使うことに決めました。

重ね仕込み醤油は天然醸造醤油に麹を仕込んで造ります。2度仕込むのでこの名前をつけました。
原料と手間隙が2倍かかり、収量は少ないです。しかし、その分、非常に濃厚な醤油です。濃厚ゆえに低塩分で仕上げることが出来ます(商品サイト)。

完成に向けて

この製品はまさにこだわり抜いた職人の技で、これまでの醤油に比べ、コク・深み・香りが別物のようにアップしました。
それに奈良発というテーマも益々鮮明になってきました。

言ってみればたかが餃子ひとつですが、おいしさを追求すると沢山の課題があります。
同時に、真剣に取り組めば、まだまだ改良の可能性が多数あることにも気づかされます。
今回の出会いもそんな無数の例の一つでした。

醤油を見つめながら「やはり、皮を何とかしよう」私はそう強く思っていました。

※作中の写真と説明文は片上醤油さんより許可を得て転載させて頂いています。ありがとうございました。

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p style=”text-align: left;”>(つづく)