もう変えるところがない ~和風ちゃんぽんインタビュー(2)

(前回インタビューはこちら

ーー前回は主に和風ちゃんぽんの誕生秘話をお聞かせ頂きましたが、今回はその味について詳しくお聞きします。

ここからが私の土俵ですね(笑)

ーー本当に(笑) 先ほど全てを変えたと言われましたが、一度にリニューアルされたのですか?

いえいえ、たっぷりと時間をかけて、それこそ10年単位で研究を重ね、味の調整を行ってきました。それは時に繊細に、時に大胆に。

ーー繰り返し続けられたと。

そうです。原材料の野菜、肉、皮、その原料、スープ、麺、配合、技法、先に紹介した保存方法、少しでも改良できる点があれば、改良し続けました。

ーーと、いうことは、今頂いた和風ちゃんぽんは、日々変わって行っているんですね。

はい。進化させたとは思いますが、理想の味を求めた結果なので、私は同じ初代と同じ「和風ちゃんぽん」であるとも思っています。

ーー画家が技術を磨いて違う絵を描いても、画風が残るようなものでしょうか?

そんな大層なものではないです。でも、そんなものかもしれませんね。

ーーではズバリお聞きしますが今の「和風ちゃんぽん」とは、どんな味なのでしょう。

文字で言うのは難しいですが「素材の持ち味を生かした、あっさりと上品な味わいのスープ」。まず、これが味の特徴です。

ーースープには相当なこだわりがありそうです。

そうですね。ダシにはとことんこだわっています。スープには、豚・鶏・鰹・ホタテ・削り節をふんだんに使い、数種類の香味野菜と共に巨大な寸胴鍋で20時間かけて7分目まで煮詰めます。

ーー20時間! ほとんど眠らないで作りだす味ですね。

いやいや、さすがに夜は眠ります(笑) ただ、ダシが命なので理想の味になるように細心の注意を払っています。まだあります。

ーーまだ?

「秘伝の反(かえ)しダレ」と呼んでいますが、基礎調味料をベースに肉の塊と数種類の香味野菜を何時間も煮込んで仕込みます。これを寝かして旨味を出して、ダシと合わせると、絶妙なスープになります。化学調味料・保存料も使ってませんので、本当に「素材の持ち味を生かした、あっさりと上品な味わいのスープ」です。ただ、問題もありまして。

ーーどういったことが問題になりますか?

スープは時間の経過と共に旨味とコクが増していくのですが、ピークを過ぎると徐々に味が劣化していきます。

ーー分かりました。そこで先ほどの保存方法ですね。

そうです。当店では、一晩煮込んだスープが一番おいしくなったタイミングで一気に専用の容器に移します。それを急速冷凍し、光と空気を遮断して氷温で保存します。これが「氷温製法」です。

ーー鍋でぐつぐつ似たスープとはイメージが少し違いますね。

一般的には大鍋からスープを注ぐイメージですが、煮込み続けると大味になってしまうんですよ。スープによっては向いているものもありますが「和風ちゃんぽん」はオーダーごとに最高のスープを提供すことを追い求め、この製法を確立しました。

ーー最高の状態をいつもお届けしたいという思いと、大学での研究による最新の技術が合わさった感じですね。

ここには自信を持っています!

ーーでは、そのスープを彩る10種類の具にはどんな思いが込められてますか?

まずは、野菜ですね。これも地元野菜を中心にしていますが、季節によって旬が変わりますので、全国各地から細かく仕入れています。

ーー規格通りではないんですね。

これは実際に私が味を確かめて、生産者の方との信頼関係を結んで、最良のものを組み合わせます。その量は180グラムで一日の野菜摂取目標量の350グラムの約半分になります。

ーー体にも優しいですね。そして、お肉も「ついにこれ」というのが見つかったとお聞きしました。

そうです。鹿児島県産「もち豚」です。この肉質はきめ細かく舌触りが最高で、とろけるような脂の軽さと甘さが特徴です。全体の味をさらに一段引き上げる主役ですね。

ーーまた、食べたくなってきました。

もう一杯行きますか(笑)

ーーありがとうございます(笑) 竹若さんの思いが伝わってきましたので。

自分で言うと変な感じがしますが、今は「もう変えるところがない」と思っています。スタートからすると40年。ついに理想に追いついた感じです。

ーー変えるところがない、というセリフはそうそう言えないですね。

もちろん、今後も貪欲に探究していきますが、今は、本当にこの「和風ちゃんぽん」を味わって頂きたい。

ーー11月はクーポンも使用できますね。

はい、超自信作を100円引きで味わって頂けます! ここ強調して貰っていいですか?

ーーはい、もちろん(強調しました)。

お願いします!

ーー私は今回のインタビューをお聞きしていて、料理というより、何かの作品、精密機械の製作のようだとの印象を受けました。

ほう。

ーー精密機械のような味、というのも変ですが、技術・変革・徹底した微調整。そこに製作者としての執念を感じました。

手前味噌になりますが、中華一筋、40年の経験と技術をこの一杯に凝縮しています。どこに出しても恥ずかしくない味だと胸を張れます。

ーー言い切ってしまいましょう。最高のちゃんぽんですね。

はい。とにかく味わって頂きたい、それだけです。

ーー本当にそうですね……今日は長時間になってしまいましたね。

でも、まだまだ、お話しできますよ! 美味しいものはいっぱい作ってます(笑)

ーーそれはまた別の機会に(笑) 今日はありがとうございました!

はい、ありがとうございます。

(2019/10/25インタビュー)